「ほら!今日は付き合うから、さっさとその文法頭に叩き込んで。あと、基本的な単語も。花、全然単語も覚えてないでしょ?」
「ぐっは……、隊長〜!もう吐血寸前です」
「やかましい。単語はひたすら声に出す!スペルはひたすら書いて覚える!」
す、スパルタ……!!
スパルタ美和子ちゃん。
やばいのは英語だけじゃないのに、今日しか付き合ってくれないらしい美和子ちゃんは、私のワークを覗き込みながら鋭い眼差しを向ける。
「もっと優しくして?お願い、優しい美和子ちゃんをちょうだい」
「テスト前に、自分の勉強そっちのけで付き合ってるんだから十分優しいでしょ!ほら、問3解いてみ。分かんない単語は辞書を引け!以上」
「……あうん」
項垂れた犬みたいに鳴いて、ワークへと視線を戻す。問3には、この英文を和訳しなさいの文字。
私は日本人だ!!!
と、心の中でワークを威嚇しながら、シャーペンを強く握り直した私は、
───コンコンッ
「姉ちゃん、入るよ」
そんな航の声に今度はドアへと視線を向ける。