「なあ、司」

着替えていると、信也が話し掛けてきた。

「ん?」
「お前さ、歌織となんか進展あったの?」
「はあ!?」

パサリ、持っていた着替えを取り落としてしまう。

「はは、そんな動揺すんなよ!お前が歌織のこと好きなのは見てりゃすぐわかんだよ!」
「…進展なんかねえし、望んでもねえよ。」
「嘘つけ!考えてもみろ、歌織を彼女にできたらな、あんなことやこんなことがどうどうとできるんだぜ!」
「あんなことやこんなことって…」

…しまった、ちょっと想像した。
カァ、顔が熱くなったのを、信也は見逃さなかった。

「お、お前想像したな!このムッツリ。」
「し、してねえよ!オラ、もう着替えただろ、行くぞ!」
「ははは!怒んなよ、俺は恋のキューピッドになってやるって言ってんだよ!」
「お前がキューピッドって柄かよ!」
「歌織は部のアイドルだからな、誰かの協力があったほうがいいぜ?競争率高ぇんだから。」
「協力あっても何も変わらねえだろ。」
「わかんねぇぞ?なんたって、俺は恋愛のスペシャリストで、しかもお前の大親友だ!!」
「たしかにお前はモテるけどよ…てか大親友じゃねえし!」
「照れんなよ!大親友のつ、か、さ、く~ん」
「キモい!」
「あ、二人とも~早く!遅いよ!!」

ナイスなタイミングで歌織が俺らを呼ぶのが聞こえた。

「悪ぃ、すぐ行く!」

信也はそう答えると、司のほうを見て、ニヤリと笑ってみせた。

うぜぇ…
内心思ってしまった感情は、無意識に赤くしてた頬のせいでかき消され、信也のニヤニヤ笑いを助長するだけに止まったのだった。