――七月上旬。


期末考査が終わり、もうすぐ夏休み。


そのせいか、今は授業中なのに少しざわついている教室。



そんな教室の中、私・壮馬 千衣【ソウマ チイ】は、新人教師が読んでいる英文をBGMに、ある一点だけをただひたすらにじーっと見つめていた。



私の視線の先には、私の席の斜め前の席にいるとある男子が。


へ?イケメンかって?違う違う。



私が見ているある男子の名前は、菅谷 真斗【スガヤ マナト】。私は心の中で菅谷くんのことを、“モブ男くん”って呼んでる。


かっこよさなんて微塵もない外見は、良く言って中の中、悪く言って下の上。あんまり話したことはないけど、性格がすごくイケメンってわけでもなさそう。


運動はほぼ平均だし、成績はいつも真ん中らへんをうろちょろしてる。


まあ、簡単に言うと、The・普通。



対して私は、すっごく可愛い。自分が自覚してるくらい、可愛い。


つぶらな瞳に潤った唇、枝毛なんてない艶のあるさらさらとした髪。


告白だってよくされるし(断ってるけど)、男女問わずすれ違えば振り返る。


それくらい、私は可愛い。