【企】悪い先生で、ごめん

「俺の意志だよ」

「え……」

「俺が、幸ちゃんのお母さんに頼んだ。〝娘さんに勉強教えさせて下さい〟って」

「なにを、言ってるんですか?」

「恥ずかしいから、安元さんから俺に頼んだことにしてもらった」

「え……どうして!?それじゃ、米司さん、わたしのこと知ってたんですか?」

「覚えてない?俺が受験生だった頃……東大受験を控えてた頃にさ、1度会ったことがあるんだ」

「………!?」

米司さんとわたしが?嘘でしょ?

「母さんのパート先に行った時、たまたま君を見かけたんだ。それで、俺に気づいた君は、挨拶をしてくれた」

ほんとに!?

「その時の俺と言えば、今よりずっとダサい眼鏡かけてて、髪だって長くて。顔なんか見えなかったかもしれないな」

「………!」

そういえば、あったかもしれない。すごくガリ勉って感じの人が、お母さんの職場にいたような。

あれが、米司さんだったの?