「どうして受けたんです?お母さんの無茶なお願い」

「安元さんには、うちの母が凄くお世話になってるらしいから」

そうなんだ……。そういえば、パート先にシフトをよく変わってあげてる人がいるって言ってたけど。その人の息子さんなのかな?

だとしても……

「大学生って忙しそうですし……私なんかに勉強教える時間があれば、自分のことしたいとか思わないんですか?」

「別に。そんなに忙しくもないよ」

「そうですか…」

「ただ、誰かに教えたことないから……幸ちゃんにわかりやすく教えられるかはわからないけど」

天下の東大生が、そんな自信なさげなことを言うなんて驚きだ。

「中学生程度の問題、楽勝ですよね…!?」

「自分が解くのと人に教えるのとじゃ、次元が違うから。わかりにくかったら、正直にどんどん思うこと言って欲しい」

良かった。凄く、優しそうな人。