帰り道に渡が「まぁ、お土産買ってきてやるから」と話を一番最初まで戻した時、僕は「わかった」と頷いた。

「お、どうしたの?急に聞き分けよくなったじゃん」

渡はにやにや笑い、僕はふてくされた振りをして答えた。

「お土産だけどな、免税店でマカデミアンナッツとか買ってきたら許さないぞ」

「安心して待ってろよ。邪魔になるくらいでかい現地の置物とか送ってやるから」

「いらねぇ~」

渡にとって僕は家族だっただろうか。
お土産を買って、帰る場所になっていただろうか。

僕は群青色の空を見上げた。
まだ完全な闇じゃない空。僕らの上に広がる群青色の天井。

渡の好きな例の曲を口ずさむ。僕もその曲が好きだった。十九の夏にぴったりと寄り添った曲だった。

夏の夜は暑く閉ざされていたけれど、ぐにゃぐにゃと伸び縮みする。
僕は空気の濃さと熱気をかえって清々しく感じた。
世界は広く、僕たちはとても若い。
その事実が眩しく、僕の視界を開けさせた。