先日、僕は大学病院で研修に参加した。母校の大学病院は都内にあり、現在は恩師が学長を務めている。

久しぶりに電車で都内に出る。少し見ないでいると、東京という街はあっという間に姿を変える。
僕らが暮らしたあの千葉の街だって、もう何年も訪れていないけれど、きっと大きく変わっているだろう。

地元の駅に再び戻ってきたのは夕方だった。
帰りのラッシュには若干早かったので、のんびり電車に乗れた。

秋の日暮れは早く、最寄り駅に着く頃には日は蜜柑色に焼け、街の向こうの山間に落ちていく時刻だ。
防波堤と海と山と夕日。綺麗だ。もう少しで薄青のドレープの上に群青の空が広がりだすだろう。
群青の天井と茫々と広がる海のコントラストは本当に胸をうつ。

僕は西口の階段上でその美しい落日の始まりを見た。
人の心に響く光景とは、大抵日常にひそんでいる。僕は一瞬を惜しむように空を見やり、階段を降りた。

自宅までは10分ほど。大通りを抜け、カーブを曲がる。
自宅近くの公園を通り掛かるとキンモクセイの緑葉が濃い色に変わっていた。あと半月もすれば錦糸卵みたいに細かな黄色の花々が見られるだろう。