「渡こそ、遅れんな」

「遅れねぇよ。昼までに海に着きたいからな」

それからしばらくだらだらクーラーの風に当たっていた渡は、四時過ぎに僕の部屋から直接バイトに行った。
水着は僕が二人分まとめて買いに行く約束になった。まあ、僕も暇なので問題ない。アーケードのスポーツショップでセール品でも買おう。

渡は出て行ってすぐに、忘れ物で戻って来た。
携帯電話をテーブルに置きっぱなしにしていたのだ。

これで、明日も連絡がつくとかそんな話をして、その後、渡は何か一言、僕に言った。
確か僕たちは顔を見合わせて笑ったのだ。

しかし、僕はこの暫時のやりとりをどうしても思い出せない。