五年前、翔一の失踪は、周囲にそれほどの驚きもなく受け止められたようだ。

ゴミと臭気と鬱屈と、犯罪に満ちた町だ。

大人たちをも怖れさせる、不良のカリスマといわれる少年が消えた。

実際のところ彼の失踪に安堵した者も、少なくなかっただろう。


もうほとんどの者の記憶から薄れ、あるいは忘れられつつある出来事。





忘れられない者が、ここに二人。