マグカップに二つミルクティーを淹れ、一つを母親に差し出す。

「ありがとねぇ」

そろそろと口に運ぶ。


「いいって、また昨夜もほとんど眠れなかったんでしょ。
ずっと咳き込んでるの聞こえてたもん」

奈緒の部屋は二階だ。
それでも聞こえる。家鳴りを呼ぶような、咳。

母親が、気まずそうに目をふせる。

重度のぜんそくを患っている。本人は否定するけれど、年々悪化していると奈緒には分かる。