「はい、静かに。全国模試、返却するぞー」

先生のよく通るいい声が、教室を走り抜けた。

ともに、生徒に緊張が走る。



「さ」わぐち

「さ」わぐち、

聞きもらさないように心の中で唱える。


「澤口一花!」

「はい!」

がたりと椅子をならし、一花はもらった成績表に見入った。


(うわー、英語いい感じ。先生効果だ。)
一花から思わず笑みがこぼれ出る。


「はい、いいかー、今回の模試はオマケがついていると思っておけ。」

「現役生が力を出してくるのは夏以降だからなー」


「上がったものはもちろん、偏差値が下がるか今までと同じだったら、
危機感もてよー」



(え?うそ、英語はいいけど、私それ以外下がってる……)



「じゃ、英文解釈の人はこの教室で。それ以外は散れ散れー」


ひょうきんな先生の声が右から左へ通り抜けていった。