だけども、お嫁さんになった鈴玉も負けてはいません。

「だけど、その時のことはわたくしも生涯忘れることが出来ないわ。――だって貴方ってば『婿入り』を『押し売り』に聞き間違えてるんですもの」

「――なっ!」
 
 龍の姿の天耀の身体が、たちまち緑から朱に変わります。

「あの時は本当に『押し売り』と聞いたんだ! 後半の『嫁』の方は間違ってない……それに」

「それに?」

「……鈴玉を見て一目で惚れたから、『早くこの女の子の許嫁になりたい』と思った。なれるんだったら強引に婿入りしても良かった。『押し売り』とそう変わらないだろう?」
 
 全身を朱に染めたままそう告白してきた夫に、鈴玉も頬を朱に染めました。

「……もう! 突然、急にそのようなことを仰られて!」

「では、これからは毎日欠かさないずに言ってやろう」

「……このようにお身体を真っ赤にされて、ですか?」

「嫌なら言わない。俺だって恥ずかしさに朱色の龍に変化しなくても済むのだし」