「まぁまぁ、待ちなさい。まだ『押し売り』は成立していないよ」
 
 女の子のお父様は、はしゃいでいる子供二人に落ち着くよう低く優しい声で伝えます。
 
 人間の子供の姿になった男の子に、女の子のお父様はこう言いました。

「『押し売り』に来たのなら、私達は代金、つまり『お金』を払わなくてはならない。だけど、まだお金を君に払っていない」

「……『押し売り』ってそういう意味なの?」

 男の子も女の子も、目をパッチリと開けて驚きました。

「君が私の家で私の仕事を手伝ったり、勉強したり、お稽古に励んだりして立派な『龍』になったら『押し売り』のお金を君の家に支払うよ。分かるかな?」

「うん! 分かる! ぼく、頑張る! 立派なりゅうになるよ!」

「後ね、お嫁さんになる鈴玉とも仲良くね」

 と、女の子のお母様は愛娘を引き寄せて、改めて挨拶をしました。

「はい! 仲良くするよ! 鈴玉は、ぼくのお嫁さんだもの!」
 
 小さな龍の子の天耀は、元気よく言いました。