天耀のお父様は鈴玉に尋ねました。

「家の天耀が鈴玉のお家に『押し売り』に言っても良いかな?」
 
 鈴玉はまたまた首を傾げます。

「『お嫁さん』は分かるけど……『押し売り』と関係あるの?」
 
 そうです。
 
 小さな鈴玉には『押し売り』と『お嫁さん』のどう繋がるか、てんで分かりません。

「じゃあ、天耀が君のお婿さんになるのは嫌?」
 
 今度は、天耀のお母様が尋ねます。

「わたしのお婿さんになることが『押し売り』なの?」

「そうよ」
 
 大人四人は口を揃えて言いました。
 
 う~ん、と鈴玉は考えます。

『りゅう』という姿が緑のウナギみたいでビックリしましたが、ここに来るまでの間に見かけた『りゅう』達はとても立派な姿でした。
 
 天耀も今はウナギですが、きっと大きくて立派な『りゅう』になるにちがいありません。
 
 それに天耀のことは嫌いじゃありません。
 
 いきなり手を握ってきてクルクルと回された時に、ちょっと強引かな? と思うところもありましたが。

「はい、分かりました」

 鈴玉はハッキリと返事をしました。

「あい、分かった。押し売りを認めよう!」

 鈴玉のお父様が天耀に言うと

「わあい! ありがとう!」

 と天耀は、ばんざいと手を上げました。拍子にりゅうに戻り、長い身体をくねらせてそのまま宙を舞っています。
 
 女の子も、その男の子の様子を見て嬉しくなって、一緒になって床の上を跳び跳ねていました。

「押し売りだー! おっし売りだー!」
 
 男の子と女の子は声を揃えて「押し売り」を連呼します。