女の子のお父様は、『りゅう』の男の子から色々と聞き出そうと質問をします。
 
 名前は天耀(テンヨウ)
 
 神界にいる、お父様のお友達の子供だと分かりました。

「一人でここまで来たのかい?」

「うん! 『せんかい』の道は分かるもん! 後はね、桃の樹が沢山植えてある場所にある、黒い屋根のお家って聞いてたから分かったの!」
 
 それだけで、よくここまで迷子にならずに来れたものだと感心した女の子のお父様とお母様でしたが、まだ、疑問が色々とあります。
 
 自分の娘と同じ年頃の子供の龍がたった一人で、この仙界である切り立った断崖の先にある桃園まで来たわけなのですから。
 
 それに『押し売り』とは何でしょう?
 
 まさか、この小さな龍の子を買えと言うのでしょうか?
 
 お父様とお母様は、お互い顔をあわせて眉を寄せました。

「いや、私の友は自分の子を売るなんてことはしないだろう。あやつは子煩悩だし」

「もしや、神界で何か起きたのかもしれませんよ?」
 
 今度は、お母様が小さな龍の子に尋ねます。

「ねえ、天耀。ここには、お父様かお母様に言われて来たの?」
 
 天耀はう~ん、と首を傾げます。

「うんとね、お父様が僕に『お前は大きくなったら押し売りにいくか?』って聞いたの。それで僕、『うん!』って言ったの」
 

 あやつがそんなことを? と女の子のお父様は、ますます眉間に皺を増やします。