「でも、明日で何かが変わるのかもしれないね」


あたしはできるだけ前向きにそう言った。


不安と恐怖だらけのこの建物の中で、前を向くのはとても難しい事だ。


口先だけで滑って行く言葉だったけれど、少しだけ気分が違うように感じられた。


「そうだよな。いい方に変わるよな」


健の手があたしの手を強く握り返して来た。


「きっと、大丈夫だよ」


あたしはそう言い、健の体を抱きしめたのだった。