「なにかしらを思い出すまであの部屋にいたら、きっと溶けてなくなっちまうぞ」


弘明がそう言い、あたしは俯いた。


ドロドロに溶けてしまったトシの姿を思い出し、背筋が寒くなる。


「さすがに、それは無理だな」


健がそう言い、息を吐き出した。


「そう……だよね」


それからあたしたちは、自分たちの血液型や身長と行った事を伝えあった。


しかし、特別ピンとくることはなにもなかった。


気が付けば窓の外には光がさし始めていて、鳥のさえずりが聞こえて来た。


「もう朝か……」


健が呟く。


結局一睡もしないまま朝が来てしまった。


しかも、話しあいもあまりできないままだった。