「ここって、宿泊施設じゃなかったんだね……」


郁美がそう呟き、ストンッと脱力したように椅子に座った。


「人も来ない。きっと、助けも来ない」


郁美の呟きが頭の中にガンガン響き渡って来る。


「言わないでよ!!」


伶香が叫び声をあげて郁美の体を叩いた。


弱い力だけれど、何度も何度も繰り返し叩く。


「だって……だってそうでしょ!?」


郁美の目ならとめどなく涙があふれ出して来る。


伶香の体を押しのけるようにして立ちあがり、建物の外へと出て行った。


「郁美!!」


いくら外へ逃げても、その先に希望なんてない。


あたしは慌てて郁美の後を追いかけたのだった……。