床にホコリは積もっていなかったのに、空中には漂っていた。


「あれはホコリじゃなくて人体に影響を及ぼす何かなんだ。そしてそれは、絶えずあの部屋の中に噴出され続けている。だから長時間あの部屋にいると、その影響が出て来るんじゃないかなって」


健の推理にあたしは感心していた。


チリも積もれば山となる。


その言葉通りの事があの部屋で起こっているのだ。


「トシも弘明も、何かを思い出しそうだって言ってたよね」


「あぁ。人間の潜在的な意識や記憶に影響して来るものなんだろうな」


そこまで聞くと、なんとなくあの部屋の意味が理解できてくる。


犯人はあたしたちに何かを思い出させようとしているのだ。


だけど、共通点のないあたしたちの記憶なんてバラバラだ。


それを思い出したところで、何ができるのかあたしには理解できなかった。


「その何かを思い出せばここから出られる、とか?」


「そうかもしれないな、あるいは、鍵のかかった部屋が開く」


健がそう言った時だった、建物ないにけたたましいベルの音が鳴りはじめて、あたしと健は身を固くした。