自分がとても不利な状況にある事をようやく理解したようだ。


「健はそんな事しない」


そう言うが、あたしの声は弘明には届かなかった。


弘明は立ち上がり、健を見下ろした。


「お前がやったんじゃねぇのかよ」


「そんなわけないだろ」


健の声が荒くなる。


さすがに自分が犯人扱いをされて冷静ではいられなくなったようだ。


だけど、ここで感情に任せて発言するのは余計によくない。


「ちょっと。やめてよ。あたし達仲間でしょ」


あたしは立ちあがり、健と弘明の間に割って入った。


どうにかこの状況を回避しなければ、健がトシを殺した事になってしまう。


「仲間? 理不尽にこんな森の中に連れて来られて、なにが仲間だよ!」


弘明がそう怒鳴り、トシが使っていた椅子を蹴り上げた。


大きな音が響き渡り、伶香が逃げるように部屋の隅にうずくまった。


「もしかして、最初から全部お前が仕組んだんじゃねぇの? 1人ずつ殺していくつもりでよぉ!?」


弘明が健の胸倉をつかみ、無理やり立たせた。


椅子が倒れ、郁美が悲鳴を上げて伶香の隣にうずくまった。


あたしは弘明に体を押されてそのまま倒れ込んでしまった。


「そんなワケねぇだろうが!!」


健が怒鳴り声を張り上げて弘明を睨み付ける。


そんなワケない。


そんな事、ここにいる全員がわかっていることだった。


高校生ができるような事じゃない。


それでも、誰かのせいにしなければ自分の精神状態を保つ事ができないのだ。