しかし、トシをフォローするように口を開いたのは伶香だったのだ。


「待って。トシに襲われてもみ合いになった時、あたしもあの部屋に転がりこんだの。その時に確かに妙な感じがしたのを覚えてる」


「は? お前、何言ってんだよ」


弘明が戸惑ったように伶香を見る。


「あたしにだって、なにが起こってるのかわからないけど……」


伶香はそう言い、俯いた。


明らかに弘明の機嫌が悪くなっているのが見ていてわかった。


「と、とにかく男性陣がそんなんじゃ安心して眠れないね」


あたしは気を取り直すようにそう言った。


この場所にきてから性別なんて関係なく、みんななにかしら我慢しているはずだ。


それが表に出てきはじめているとしたら、全員が危ない。


「今日から2人ずつで部屋を使う事にするか」


健がそう言った。


ベッドの大きさを考えれば、2人は横になることができる。


そう考えた瞬間、健の寝顔を思い出してしまって慌てて左右に首をふって、かき消した。


「男も女も3人ずつじゃ、どうしても余るだろ」


弘明がどうにか怒りを押し込めてそう言った。


「それならお前が伶香と2人で部屋を使えばいい。その方が伶香も安心なんじゃないか?」


健の質問に、伶香は「うん」と、頷いた。


「それじゃあたしが郁美と2人で部屋を使うのね。健とトシは?」


「俺たちはさすがに別々で寝るよ。女子の安全さえ確保できればそれでいいんだしな」


「そうだね、そうしようか」


あたしは健の言葉に頷いたのだった。