トシは一番にみんなの事を考えて、自分の考えを発言してくれていた。


体格的にも伶香と似たようなものだった。


そんなトシが伶香を襲うなんて……。


トシを見ると俯いたまま顔も上げない。


「なにか言えよお前!」


弘明がトシの座っている椅子を蹴った。


その衝撃でトシの体が揺れる。


「あの部屋に入って、階段がないか調べてたら……急に気持ちが大きくなってきて……」


ボソボソとしゃべるトシ。


「あの部屋ってなんだ?」


健が聞く。


「突き当りの、埃っぽかった部屋の事だ。階段があるかどうか、悪いけれどみんなの部屋も一通り調べさせてもらった。



鍵がかかって開かない部屋以外は全部調べたんだ。その時こいつが1人で突き当りの部屋を調べて、出てきた途端廊下にいた伶香に馬乗りになりやがったんだ!!」


弘明は説明しながら声を荒げ、今にもトシに殴りかかってしまいそうだった。


健が2人の間に座り、手が出せないように壁になった。


「それ、本当か?」


「……本当だ」


トシが震える声で頷いた。


伶香が思い出したように涙を浮かべる。


あたしは伶香の肩を抱きしめた。


その肩は小さく震えている。