小道を下るのは早かった。


一度通った道だし、重力に任せて足を進めると夕方になる前に建物まで戻って来ることができた。


収穫なしという報告をするのは少しだけ残念だったけれど、こうしてちゃんと戻ってこられた事にホッとしていた。


「ただいま」


まるで自分の家のようにそう言い、健がドアを開けて中へ入る。


あたしもそれに続いて建物の中に入ると、途端に重苦しい空気に包みこまれた。


いつもの椅子に伶香と弘明とトシの3人が座っていた。


しかし、今朝とは明らかに違うところがあった。


伶香の目が赤く充血していて、頬には涙の痕がある。


弘明は目を吊り上げてトシを睨み付けている。


トシの左の頬は青く腫れ上がり、うなだれていた。


「ど、どうしたのみんな」


異様な雰囲気の中あたしは思わずそう聞いていた。


その言葉に一番に反応したのは弘明だった。


「こいつが伶香の事を襲おうとしたんだ」


そう言い、弘明はトシを指さした。


トシの肩がビクリと跳ねる。


「嘘でしょ? そんな……」


トシが伶香を襲うなんて、想像もできない。