トシは『読書』。


トシらしい趣味だ。


そして郁美は……『音楽鑑賞』。


その文字にあたしは思わず「え?」と呟いて郁美を見た。


郁美もあたしと同じ『ショッピング』と書くと思っていたのに……。


少し、自意識過剰だったのかな。


あたしは寂しい気持ちになったけれど、顔には出さなかった。


「趣味もバラバラだな」


健がため息をついてそう言った。


弘明と伶香が同じ趣味なのか、カップルならではだ。


あたしたちの共通点とは言えない。


「共通点は趣味じゃないか……」


トシがそう呟いて考え込んだ。


「やっぱりさ、無差別なんじゃない?」


郁美がそう言った。


「無差別だとしても、相手は俺たちがどこのだれかをちゃんと把握してる」


トシはそう言い、着ている制服を指さした。


それぞれの学校の制服。


自分たちは相手の検討もつかないのに、相手は自分たちを知っている。


それはとても気持ちが悪い事で、あたしは軽く身震いをしたのだった。


それから他になにか共通点がないかと探したけれど、結局あたしたちの共通点は見つからなかったのだった。