「でもあの時一緒に行動していれば……」


健が言う。


なにもかも、後悔だらけだ。


起きてしまったことは変えられないのに、それでも思ってしまう。


『あの時、こうしていれば』


あたしたちは今までだって後悔の連続で生きて来た。


それは時に、取り返しのつかない事に繋がる事もある。


マミちゃんのように……。


その時だった、広間にけたたましい電話の音が鳴り響いてあたしと健はハッと電話へ視線を向けた。


「なんで……?」


どうして今頃電話が鳴りはじめたのか、あたしは混乱して健を見た。


まさかまた何かやれとか言うんじゃないだろうか?


ここにはもうあたしと健しか残っていないのに……!


健が大きく息を吸い込み、電話に近づいた。


電話はしつこくなり続けていく。


あたしたちが受話器に出るまで鳴り続けるだろう。


健が受話器を取った。


「はい」


『すべてを思い出してくれてありがとう』


それは機械音ではなく、男性の声だった。


『助けを向かわせるから突き当りの部屋から屋上へ出て待っていなさい』


男の声はそう言い、電話は一方的に切れてしまった。


「今のなに?」


あたしは立ちあがってそう聞いた。


「わからない。でも、助けがくるって……」


健も戸惑ったような顔をしている。


電話の声を信じていいのかどうかわからない。


でも今は……「行こう」健の言葉にあたしは強く頷いたのだった。