☆☆☆

その夜はやけに静かだった。


同じベッドの中に健のぬくもりを感じる。


だけど眠る事なんてできなくて、あたしは布団を頭まで被った状態で目を開けていた。


暗闇の中、健の息遣いだけが聞こえて来る。


吸って、吐いて、吸って、吐いて。


その呼吸に合わせてあたしも呼吸をした。


あぁ、あたしも健もまだ生きているんだ。


生きていればどうにかなるなんて、そんな身勝手な事を言うつもりはない。


だけど、今こうして2人生きていることが嬉しくて、あたしはまた泣いていた。


いつまで生きる事ができるんだろう?


いつまで健は生きているんだろう?


あたしはギュッと健の体に抱き着いて、キツク目を閉じた。


失いたくない。


死にたくない。


死んで欲しくない。


未来のない建物の中で、あたしは必死に命を感じていたのだった。