伶香が郁美の分までご飯を作って部屋に持って行き、そっと手を合わせる。


だけど、誰も何も言わなかった。


ただただ時間ばかりが過ぎていく。


あたしは郁美の亡骸を見つめて座り込んだまま動く事ができなかった。


食料がなくなればあたしたちも次第にやつれて死んでしまうんだろう。


それがいつごろになるのかわからないけれど、そう遠くない将来だった。


「すこし、何か食べる?」


伶香にそう聞かれて、あたしは「いらない」と、答えて左右に首をふった。


とても何かを食べる気分じゃなかった。


食欲なんてどこかに消えてしまっている。


「おかずは冷蔵庫に入れておくから、お腹が空いたら食べてね」


伶香はそう言うと、部屋を出て行った。


あたしはまたぼんやりと郁美を見つめていた。


最後の最後で本当に分かり合えた友達。


自分たちの汚い部分をさらけ出して、そして笑い合う事ができた友達。


きっと、もう二度とそんな友達はできないだろう。


あたしはそっと郁美の頬に触れた。


溶けた皮膚が柔らかく指に絡み付く。