「少しでも、役に立ちたくて」


郁美はしっかりとした口調でそう言い、ほほ笑んだ。


その笑顔も、溶けた頬を無理やり押し上げているだけだった。


「夜に1人で部屋に入ったのか?」


健が震える声でそうきいた。


郁美は健を見て少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。


「そうだよ」


「なんで、そんな事を……!!」


「だって、みんなで外出てほしいんだもん」


郁美はそう言い、あたしを見た。


その目はとても澄んでいる。


嘘をついていないということは、すぐに理解できた。


「お願い明日花、あたしが思い出したことをちゃんと聞いて」


郁美がそう言い、あたしに一歩近づいた。


その衝撃でどこかの肉がボトリと床に落ちていく。


「わかった。わかったから、そこに座って」


なるべく郁美を移動させないよう、あたしはそう言った。


郁美は廊下の真ん中に座り、あたしはその前に座った。


「あたし、思い出したの」


「うん」


「あの公園にいたマミちゃん。斎藤マミちゃん」


斎藤マミ……!!


そうだ。


マミちゃんの苗字は確かに斎藤だった。