まだ返事をしていないのに、ドアが開く。


「大丈夫か?」


健があたしの隣に座ってそう聞いて来た。


「大丈夫だよ」


あたしは頷いてそう答えた。


こうして健と2人でベッドに座って会話をするのも、何度目だろう。


相変わらず近い距離にドキドキしてしまうけれど、それも心地よかった。


「明日花がマミちゃんの顔を思い出してくれたおかげで、明日には本当にどうにかなりそうだな」


健がそう言い、あたしの肩に手を回した。


大きな手に包み込まれて、ドキッとしてしまう。


「キッカケは伶香だよ」


「伶香?」


「うん。伶香が髪の毛を耳に欠けた時に、マミちゃんの事を思い出したの」


「どういう事だ?」


「健はまだ思い出さない? マミちゃんは髪の毛を耳にかけるのが癖だったんだよ」


あたしが言うと、健は首を傾げた。


「そうだったっけ?」


健の中ではまだマミちゃんの記憶は曖昧なようだ。


「俺はさ、なんか嫌な雰囲気しか思い出せないんだ」


「嫌な雰囲気?」


それの方がわからなくて、あたいしは首を傾げた。


「あぁ。女子は参加させなかったから明日花は知らないと思うけど……」


そこまで言い、言葉を切る健。


何か言いたそうだけれど、簡単に口には出せないようだ。