最初に、健はあたしたちの誕生日を順番に打ち込んでいった。


あの公園に一番遠い存在と言える伶香の誕生日だけは抜いた。


しかし、ドアは開かない。


次はクラス番号だった。


1年生の時あたしと郁美は同じクラスだったから、片方だけ入力をした。


だけどダメ。


やっぱり、そう簡単には開かないようになっているみたいだ。


「次で最後だな」


弘明が言う。


昨日も同じ事を思っていたことを、あたしは思い出していた。


きっと今日で終わる。


このドアも開く。


そう期待していた。


健は最後に小学校時代の出席番号の最初の数字を入力していった。


結果はダメ。


鍵は開かなくなってしまった。


それを見届けたあたしは大きく息を吐き出した。


ドアが開かなかったと言う失望感の中に、安堵感があった。


ドアを開けなきゃ出られない。


だけどその向こうにあるものを見るのが怖かった。


あたしはドアに貼られた絵をジッと見つめた。


この子は一体誰なのか、なぜだかわからないけれど思い出すのが怖いんだ……。