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着替えをして広間に行くと、健が言っていた通りすでに朝食ができていた。


ご飯を作ってくれた伶香と郁美に謝り、ようやく自分の席についた。


「じゃ、とにかく食うか!」


弘明がそう言い箸を持つ。


「空腹のままじゃ何もできないもんね」


伶香がそう言い、笑った。


みんなとご飯を食べるのも、もしかするとこれで最後になるかもしれないんだ。


そう思うと、途端に寂しさが込み上げて来るのがわかった。


もちろん、こんな建物からは今すぐに脱出したいと願っている。


ただ、外へ出た後も弘明と伶香との関係が続けばいいなと思えていた。


「伶香のご飯はやっぱり美味しいね」


郁美がお味噌汁を食べてそう言った。


「でしょ? 今度は家に呼んであげるよ。あたし9月が誕生日だから、パーティーしようよ!」


「へぇ、9月生まれなんだ?」


「でも伶香の誕生日に自分で料理をするの?」


あたしが2人の会話に割って入ると、伶香は「それは変か……」と、真剣な顔で考え込んでしまった。


その様子がおかしくて、あたしと郁美は声を出して笑った。


みんな、なんとなくわかってるんだ。


終わりが近いと言う事を……。