部屋の中に入ると郁美の匂いが残っているような気がした。


何度か遊びに行った事のある、郁美の家の香りがする。


家庭的なその香りはとても心地よくて、あたしは壁に背中を持たれかけて座った。


窓の外には小鳥が木に止まって遊んでいるのが見える。


今日はとてもいい天気で、太陽の光がまぶしかった。


こんな場所にいなければみんなで騒いで遊んびたいような日だった。


あたしはそっと目を閉じた。


そう言えば、この部屋は空調が聞いている。


どこからか涼しい風が入ってくるのは、きっとこの部屋から出られないようにするための細工なのだろう。


目を閉じていれば眠ってしまいそうになる中、あたしは幼い頃の記憶が蘇ってきていた。


郁美が言っていたのと同じ、7歳くらいの頃の自分が瞼の裏に蘇って来る。


7歳のあたしの足元にはピンクのサンダル。


それは誕生日の時に両親に買ってもらったもので、とても気に入っていたサンダルだ。


今まで忘れていたはずなのに、その時の喜びまでもが胸の奥に蘇って来るのを感じる。


白い花がついたサンダルは歩けばハイヒールのような音がして、自分が大人になった気分になったものだ。