トシの部屋から出て来たのはその紙くらいで、他にヒントになりそうなものは特に見つけられなかった。


収穫があったようななかったような、すっきりしない気分のままあたしたちは部屋の前に来ていた。


「今日は誰から行く?」


伶香が聞く。


するとすぐに郁美が「あたしが行く」と、名乗り出た。


あたしは驚いて郁美を見た。


今まであまり積極的じゃなかった郁美にしては珍しい。


「郁美、大丈夫?」


「うん。早く終わらせたいから」


郁美は力強く頷く。


「明日花。もし昨日みたいなことになっても、あたしの言葉は全部無視してね」


「郁美……」


「あたしが感情的になっても、それは全部この部屋が余計な感情を思い出させているから。あたしの素直な気持ちは、明日花とずっと親友でいたいってことだけだから」


郁美が少し照れくさそうにしながらも、そう言ってくれた。


あたしはそれが嬉しくてつい笑顔になった。


「ありがとう郁美。その言葉を信じてるからね」


「うん」


郁美は大きく頷くと、ドアを開けて部屋の中へと入って行ったのだった。