「どういう事なんだろうな」


健が紙を一枚取り出してそれを光に透かせて見たりしている。


しかし、何かが浮かび上がって来る様子はなさそうだ。


「全部真っ黒なの?」


伶香が弘明へ聞く。


「さぁ、どうかな……?」


弘明はそう言い、紙を机の上に並べていく。


どの紙も、何かを書きかけて途中で黒く塗りつぶされているように見える。


トシが何かを伝えようとしていることがわかった。


「あ? なんだこれ」


弘明が最後の一枚を手に取り、首を傾げた。

その紙を覗き見ると、そこには幼い少女の絵が描かれていた。



お世辞にも上手とは言い難い、子供の落書きのような絵。


その絵は幼女だと理解できたのは、スカートのようなものを身に付けて、うずまきのキャンディーを手に持っていたからだ。


「女の子……だよね?」


郁美が恐る恐る紙を見てそう言った。


「そうだね。でも、それがなんなのかわかんないね」


あたしはそう答えた。


みんなもこの絵の意味が理解できないらしく、首を傾げている。


「ただのトシの趣味なんじゃないの?」


早々に絵に興味を失った伶香が冗談っぽくそう言った。


「まぁ、とりあえず広間のテーブルに置いておこう。俺たちがあの部屋から出てきた時に、何か感じるものがあるかもしれないしな」


健がそう言い、紙は一旦広間のテーブルへと移動させられたのだった。