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トシの部屋はどの部屋とも変わらなかったが、ベッドの布団が乱れたままになっていた。


トシが生きていた形跡に胸がズキリと痛むのを感じる。


「特に変わったところはないな」


健が部屋の中を見回してそう言った。


「あぁ。なにかあるとすれば、ここか」


弘明がそう言い、机の前に立った。


ペンや紙は全部机の中にあったものだ。


あたしたちが必要とすることをわかっていて、ちゃんと準備されていたのだ。


「開けてみてよ」


伶香が弘明の隣でそう言った。


「あぁ」


弘明がそう言い、勢いよく引き出しを開けた……。


その瞬間、伶香が「うっ」と低い声を出して後ずさりをした。


「なんだこれ」


弘明が首を傾げている。


「なにがあったの?」


あたしと郁美が引き出しの中を覗き込む。


そこには真っ黒に塗りつぶされた紙が入れられていたのだ。


「ペンで塗りつぶしてある……」


郁美がそう呟き、自分の体を抱きしめた。