そのままの君で

朝のHRが終わる。

旬君の机の上にはたくさんの……
チョコレート。

先生にも冷やかされクラスメートの男子にも冷やかされている。

「すげーじゃん、朝だけでこれかよ」

「うわ、手紙とがあるじゃん」

聞きたくなくても耳に入ってくる会話。

やっぱり、旬君は人気者なんだと
改めて思い知らされる。

「一個、くれよ」

そう言ってひとつ開けようとした男子。

「バカ、無理だ」
そう言ってそれを取り返した。

意地悪やけち臭くてそう言ったんじゃない。
旬君の優しさだ。
勇思いを込めて渡したチョコレート。
それを旬君以外の誰かに食べられたら
きっとその子は傷つく。

「なんだよ、一個くらいいいじゃん」

「そういう問題じゃねーよ」

「誰か袋ない?」

「あるよ、はい」

渡された茶色の大きな布袋。

「汗くせーかもな」

「しょーがねー我慢する」

その袋に机の上のチョコレートを入れた。