そのままの君で

「おはよー」

いつものカバンとは別に今日は小さな紙袋を持った女の子が多い。

きっと、みんなチョコレートを
誰かにあげる為なんだ。

「おはよー」
廊下で一緒になった同じクラスの
由紀ちゃんも、
ピンクの可愛い紙袋を持っていた。

「由紀ちゃん、それ」

ピンクの紙袋を指さす。

「へへ、先輩に渡すの」

「すごい、頑張って」

由紀ちゃんの好きな人は三年生。
同じ吹奏楽部の先輩。

大学も決まりほとんど学校には
来ていない先輩が今日は
吹奏楽部の送る会の為に来るらしい。

「バレンタインの日に送る会。
これは神様がくれたチャンスだよね」

そう話す由紀ちゃんは
キラキラしている。

「今日、言わなきゃ絶対後悔する」

きっと断れると思うけど
それでも気持ちを伝えたい。

そんな風に言えてしまう由紀ちゃんが
とても眩しくて。

カバンの底にそっと押し込んでる
私のチョコレートが可哀想な気がした。