数日後、ゐねはわざわざパウンドケーキを焼いて、東出邸を訪れた。
主は留守していたが、夫人と空は自宅にいた。
玄関先で深々と頭を下げたゐねに、夫人も空も優しかった……。
でもゐねは気づいた。
それは、大人の対応だということに。
物心つく前からお世話になっていた人達だから……ついつい家族のように甘えていた。
目に余る言動やワガママもいっぱい言ってきた。
……私……なんて、子供だったのだろう。
東出も空も、かほりにとっては友人でも、ゐねの友人ではない。
ゐねにとっては、恩人であり師だ。
親しき仲にも礼儀あり。
そんな言葉を今さらのように理解したゐねは、……急に孤独に襲われた。
無条件に自分を愛してくれるのは、家族だけ?
夫婦って、普通は他人同士よね……。
生涯を共にするって……簡単じゃない……。
千尋は従兄だし、一緒に住んでいたので家族も同然だ。
だから気心は知れてるし、お互いの長所も短所も全てを理解している。
……でも……恋はしていない……。
千尋がゐねを愛しているのは間違いないが、ゐねは……。
独りだ。
この世にただ独り。
家族のほかに、誰もいない……。
急にゐねは、自分が社会からはみ出しているように錯覚した。
思考の渕を迷いに迷って彷徨って……ゐねは、気づいたら、なぜかIDEAの事務所ビル前に立っていた。
……だって、自宅を知らないんだもの。
ゐねは葛藤を飲み込んで、事務所を訪ねた。
まずは受付でりう子を呼んでもらった。
「どうしたの?珍しいわね。かほりちゃんなら来てないわよ。今日は埼玉の教会でコンサートだから。」
「……うん。知ってる。だから来たの。……ち、……」
父に逢いに来た……とは、口が裂けても言いたくなかった。
だからと言って、「尾崎さん」とか「あの男」というのも変だろう。
言葉に詰まっていると、りう子は気づいてくれたようだ。
「あー……そう。……うん。喜ぶと思うわ。えーと、たぶん自宅にいると思う。……どこかに呼びだそうか?事務所に来させる?」
自宅……。
どんなところに住んでるんだろう。
「ううん。訪ねてみる。……住所を教えていただけますか?」
りう子は、PCからゐねの携帯に雅人の住所を送信した。
「これから行くの?……家に居るように連絡しようか?」
心配そうなりう子に、ゐねは笑顔を見せた。
「ありがとう。でも、連絡して逃げられたらショックで立ち直れないから、いい。……ダメ元で行ってみる。」
そう言って、ゐねはりう子にお辞儀した。
主は留守していたが、夫人と空は自宅にいた。
玄関先で深々と頭を下げたゐねに、夫人も空も優しかった……。
でもゐねは気づいた。
それは、大人の対応だということに。
物心つく前からお世話になっていた人達だから……ついつい家族のように甘えていた。
目に余る言動やワガママもいっぱい言ってきた。
……私……なんて、子供だったのだろう。
東出も空も、かほりにとっては友人でも、ゐねの友人ではない。
ゐねにとっては、恩人であり師だ。
親しき仲にも礼儀あり。
そんな言葉を今さらのように理解したゐねは、……急に孤独に襲われた。
無条件に自分を愛してくれるのは、家族だけ?
夫婦って、普通は他人同士よね……。
生涯を共にするって……簡単じゃない……。
千尋は従兄だし、一緒に住んでいたので家族も同然だ。
だから気心は知れてるし、お互いの長所も短所も全てを理解している。
……でも……恋はしていない……。
千尋がゐねを愛しているのは間違いないが、ゐねは……。
独りだ。
この世にただ独り。
家族のほかに、誰もいない……。
急にゐねは、自分が社会からはみ出しているように錯覚した。
思考の渕を迷いに迷って彷徨って……ゐねは、気づいたら、なぜかIDEAの事務所ビル前に立っていた。
……だって、自宅を知らないんだもの。
ゐねは葛藤を飲み込んで、事務所を訪ねた。
まずは受付でりう子を呼んでもらった。
「どうしたの?珍しいわね。かほりちゃんなら来てないわよ。今日は埼玉の教会でコンサートだから。」
「……うん。知ってる。だから来たの。……ち、……」
父に逢いに来た……とは、口が裂けても言いたくなかった。
だからと言って、「尾崎さん」とか「あの男」というのも変だろう。
言葉に詰まっていると、りう子は気づいてくれたようだ。
「あー……そう。……うん。喜ぶと思うわ。えーと、たぶん自宅にいると思う。……どこかに呼びだそうか?事務所に来させる?」
自宅……。
どんなところに住んでるんだろう。
「ううん。訪ねてみる。……住所を教えていただけますか?」
りう子は、PCからゐねの携帯に雅人の住所を送信した。
「これから行くの?……家に居るように連絡しようか?」
心配そうなりう子に、ゐねは笑顔を見せた。
「ありがとう。でも、連絡して逃げられたらショックで立ち直れないから、いい。……ダメ元で行ってみる。」
そう言って、ゐねはりう子にお辞儀した。



