「さっ、ミルフィーユ特製紅茶、どーぞ!」



桐原さんと入れ替わりで厨房から出てきた店長が、カウンターに紅茶を並べた。どうやら今の間に紅茶を淹れていたらしい。


店長に促されるまま、私たち二人はカウンター席に腰をおろす。



ふぅ、とお姉ちゃんが思いつめたようなため息を漏らす。

桐原さんはこちらに背を向け何か作業をしているようだ。



…バカ。

関係ないならわざとらしく背なんて向けないでよ。本当にバカ。



「明里ちゃんのお姉さんは今お仕事とか何されてるんですか〜?」


どことなく重苦しい空気を読むことの出来ない店長が能天気な声でお姉ちゃんに聞いた。



「今は特に何も」

「あっ、そうなの?じゃぁよかったらウチで働いちゃう?」



「…はぁ!?」



突然訳わからないことを言い始めた店長に素っ頓狂な声が出た。


何を言っているんだこの青メガネ。



「店長…何ですかその意味が分からないナンパ文句」


「いやナンパじゃないよ?本気だよ?
ほら、もう少しでクリスマスでしょ?今年はキララ王子効果で例年を大幅に上回る客足になると思うから、短期のアルバイト雇おうかなぁってちょうど考えてたんだよ」



ちょうどよかった!と店長が熱い瞳でお姉ちゃんの手を握る。


すかさずその手を引き剥がして「いやいやいや!」と意義を唱えた。