お母さんの希望を聞いて、またキッチンへと向かう湊君。

そんな湊君の後ろ姿を眺めていると、お母さんが頬杖をついてじっと私を見つめてきた。



「……どうしたの?何か欲しいものある?」



そう聞いて首をかしげると、お母さんは首を左右に振って笑った。



「なんとなーく、こんなことになる気がしてたの。湊君が実花にとって大事な人になって、実花が湊君にとって大事な人になって。お父さんがいなくなって少し寂しくなったこの家が温かくなるんじゃないかなーって」



「お母さん……」



「実花、私に宝物をひとつ増やしてくれてありがとう。もう家族とも言える人を増やしてくれてありがとう」



お母さん。
ありがとうはね、私のセリフなんだよ。



「こちらこそ、私を湊君に出会わせてくれてありがとう」



そんな会話をして、私とお母さんは微笑みあった。