*実花Side*



「じゃ、行ってくるから」


「うん」



いつもと同じように私より早く家を出る湊君の言葉に、テーブルを拭きながら顔だけ上げて返事をすると湊君は不服そうな表情を見せた。



「……テーブルの磨きが甘い!!とかいう意地悪なお姑さんみたいなこと考えてる?」


「違うわ。まあローボードの掃除はいつも甘いなと思って俺が手を加えてるけど」



やっぱり湊君は細かすぎる!!
きちんと掃除してるのに!!

湊君みたいに、テレビのプラグまで丁寧に拭いたりはしてないだけであって。



湊君の徹底ぶりを思い出し苦笑いしていると湊君はグッと私と距離を詰めてきた。

何事かと思っていると、チュッと軽くキスをしてきた。



「人と挨拶するときは手を止めること。……じゃ、今度こそ行ってくるから」