[完結]お試し同居してみたら甘い恋がはじまりました。




けど実花に直接聞くには勇気が要りすぎることで。

たこ焼きを買って俺のもとに戻ってきた実花に、俺はただ「お帰り」ということしかできなかった。



それから俺と実花は目についた屋台で売っているものを買って、屋台がたくさん並んでいる場所からは少し離れたところにあるテトラポットに腰掛けた。



「ここからなら人ごみに邪魔されずにゆっくり見れそうだね」


「な。……あ、鈴カステラちょうだい」


「どーぞ」



時折会話を交わし、時折無言でひたすら買ったものを食べて花火の打ち上げが始まる時間を待つ。


波音を聞いているとふいに実花が俺の方に手を伸ばしてきて、そっと俺のサングラスを顔からはずした。



度が入っていないレンズ越しにある緑がかったブラウンを見るのは2時間ぶりくらい。