だが、そうだ、約束は約束だ。琶子は項垂れ、祈る。
どうか榊原さんが金ちゃん並みに、イヤ! それ以上に! 悪運強く逞しくありますように……と。

そして、フト思う。敗者が祈ってもあまり効き目がないな……と。

そう、あの日、あの後、何故か則武の提案でジェンガ大会が始まった。
ゲームに没頭するうち、琶子の心に相反する二つの思いが湧き上がった。

『負けて悔しい思い』と『リアルの楽さ』

それは、バーチャルな妄想世界で味わうワクワクやドキドキとは比較できないほど、琶子の心を激しく鼓動させた。

あのまま終われば、気持ち良く眠れたのに……と琶子は思ったが、現実はそう甘くなかった。

そもそもアレが、今回を決定付ける元凶となったのだ。

敗者は勝者の命令は何でも聞く! というルールの元、白熱の末、結果、勝者は清、そして、敗者は琶子となった。

清の命令は「付き合え」の一言だった。

まんまと乗せられた? そう思った時には既に遅し! の状態だった。
結局、清とリハビリという名の付き合いを始めることになり、邸宅訪問は決定事項となった。

あの日、とうとう眠れなかった。

クローバーに対する『悔しい』は当然だが、それより、又、疫病神になってしまうのでは、という『恐怖』で……。

なのに心の奥底が、未知の何かを期待している。

しかし……と琶子は当日の大人げない男たちを思い出す。
金成もクローバーも……琶子以上に楽しそうで真剣だった。

則武曰く、人生はゲームと同じ! だそうだ。
生きるか死ぬか、勝つか負けるか、選択は二つに一つ。
ならば、生きて勝つ! 勝つことに意義があるそうだ。

彼等の辞書には『敗者』という言葉は載っていないらしい。
勝利のみが生きる明かしだ! と宣った。

だから……どんな子供騙しのゲームでも真剣にやるのが、クローバー流の遊び方だそうだ。