貴婦人たちが渋々ながらも立ち去ると、則武が裕樹に言う。

「お前って、本当に天使の仮面を被った堕天使だよな」
「フン、彼女たちと踊る気全然ないのに、後でだって! この二枚舌」
「まっ、俺らより、視線一つで追っ払う清が誰より非道だけどな」

則武と裕樹は清を見る。

「あのぉ、私に構わず、どうぞ楽しんできて下さい」

琶子は申し訳なさそうに、遠巻きにこちらを見る貴婦人たちに目をやる。
そこに登場したのは……。

「なかなか面白いものを見せてもらった。いい余興となったぞ。特にルートヴィヒ2世」

ガハハと豪快に笑う司祭に扮した市之助。

「マリー・アントワネット、OH! なんと美しい。人込みは慣れたかな?」

マスケラの奥の瞳が優しく問い掛ける。
則武と裕樹が驚きの表情となる。

「なぁ、今だかつて、あんな市之助氏の目、見たことあるか?」
「ない! 今日はいろいろ珍しい場面を見る、記念の日だね」

二人はウンウンと頷き合う。