理由なんて、必要ないのかもしれない。

私は碧人が好き。

碧人も私を好き。

ただ、それだけ。


「碧人、好き」


碧人の胸に飛び込むと、当然の様に抱きしめてくれる碧人がいる。


私にとって、一番幸せな場所。


まだ、私の胸はドキドキしているけれど。

同じくらい、碧人の胸もドキドキしている。


「あのー。お二人さん、お楽しみのトコ悪いんだけどさぁ。雨降って来たよ?」

「マジかよ⁈ 行くぞ涼香。オーク、お前も来いよ」

「はぁ? なんで俺も行くの?」

「いいから! 走れ涼香」

「碧人?」


オークに声をかけられ、碧人は私の手を引き屋上を後にした。

碧人に手を引かれ、階段を下る。

時折、私を気遣い振り向く碧人は、オークがついて来ている事も確認すると、再び前を向く。


「碧人、どこ行くの?」

「教室!」


教室⁈

あ、もしかしてレイにお礼でも言うつもりなの?


そうだよね。

碧人の気持ちを知る事が出来たのも、私が素直になれたのも。

全てはレイと出会えたからだし。

レイからチョークをもらったから、終わったはずの恋をやり直す事が出来たんだもの。