「……藍雪」


「何?お母さん」


「お父さんは?……楓斗(ふうと)は?」


ポツリと呟くお母さん


これで何回目だろう


このやり取りは…


「ねぇ…あの人は?楓斗は?…黙ってないで答えて!藍雪‼︎」


ガシャンッ‼︎


近くの花瓶を投げ捨て、近くの物を片っ端から投げる


「…っおかあさん!…やめて、お願い…やめて!」


泣き叫ぶ母を必死に止めようとするが、突き飛ばされてしまう


「…うっ!」




「…藍雪?どうしたの⁉︎」


外まで音が響いたのか華が顔を覗かせる


「…大丈夫だから…入ってこないで」


私はナースコールを押す


こうなったら薬を打ってもらうしかない


しばらくすると母の担当医が入ってきて、処置をする


「…藍雪ちゃん。大丈夫?」


薬で眠ってしまった母に布団をかけた後担当医の楠先生が私に心配そうな顔をする


「…はい」


背中が少し痛むが何食わぬ顔をする


「いつもありがとうございます」


「…すまないね。お母さんのこと」


「…先生のせいじゃないですよ。私が悪いんです…私のせいで母は心が壊れたんですから」


私の言葉に先生は悲しそうな顔をする


「藍雪ちゃんのせいじゃないよ…自分を責めるのはよくない」


「……先生、いつもの薬もらえますか?もうなくなってしまって」


これ以上、陽斗達に知られたくないため話を逸らした


「…まだ飲んでるんだね、あまり若い子には進めたくないんだけど」


「…お願いします」


軽く頭を下げて言う


「…わかった。下でもらうといいよ。言っておくから」


「…はい」


先生は病室から出て行く


「…ごめんね。お母さん、ちょっと病気で…心の」


「…そうか、悪かったな」


「…藍雪、大丈夫?」


「大丈夫ですか?」


「…藍雪」


陽斗、華、裕也、昴が心配そうに聞く


「…ごめん。1人で帰るから」


「…そうか、わかった」


陽斗達が病室を出るのを見送った後、散らかった物を片付ける


「…泣くな……泣くな!…しっかりしろ!藍雪!」


自分に必死に言い聞かせる


私は強くならなきゃいけない


強く


強く


そして…お父さんとお兄ちゃんの仇を…