覚えてない、わけじゃない。
だって、四年経った今でも夢に出てくるくらいなんだから。覚えてないはずがない。
「……朱里は、すぐあの話を出すんだから」
私はそう呟くと、ゆっくり朱里の後を追った。
途中で同級生に会い、話すけれど、私は朱里のあとを追っていった。
昇降口に入ると、靴を履き替えた朱里が
いつものように、男子と話している。
「えぇ〜?連れていってくれるのぉ?」
「朱里ちゃんが喜ぶなら」
男の子は、耳まで赤くして、すごく嬉しそう。
……ま、可哀想に。
私は靴を履き替えて、バタンっと閉めた。
すると、それは、男の子の心に矢が突き刺さるのと同じタイミングだった。
「なにそれ、朱里のため?」
「あ、当たり前だろ…!」
「ふぅん…。つまんない。ただ優しくして
あげただけなのに、なにそれ?」
朱里は、可愛いらしい声といつもの笑顔でそう言った。目は、笑っていけど。
「ほんと、つまんない男。
優しくすれば落ちちゃうんだもん」
最後に、朱里はそう言い捨てると、
私のところに走ってきた。
「もぉ、遅いよ!
ゆっくり歩いてたでしょ〜?」
……さっきと変わらない顔で。
「朱里、あの子いいの?」
私が、チラッと、立ち止まってる男の子に目を向けると、朱里はつまんなそうに言った。
「朱里、最初から本気じゃなかったも〜ん」



