「……っ、なんで…」
「中谷さん……」
びっくりしているけど、私は、そんなことしてる場合じゃない。
だって、朱里は、あんなに笑って話してたけど、昨日おじさんに触られてた。
私は、すぐにトイレのドアを開けて、部屋まで走る。すると、誰かとぶつかって転んでしまった。
「……いった、」
そう言って、目の前を見ると、その人は私のことを見つめて立っていた。
……関わりたくないのに。
「っ、ごめん」
目を逸らし、そう言うと奏太は、何も言わずに、私の横を通り過ぎて行った。
「……なにあれ」
後ろ姿を見ながらそう呟き、部屋まで走って行った。
ドアを勢いよく開けると、朱里は何もされてなく、楽しそうに歌を歌っていた。
「はぁっ、はぁっ、」
肩で息をしてると、さっきまで私の隣にいた男子が駆け寄ってきた。
「どうかした? 大丈夫?」
私は、その言葉になぜか安心してしまい、涙目でその男子を見上げてしまった。
「え……?泣いて……」
「ちがっ、ごめん……。」
私は、急いで目の周りに浮かんでる涙を拭き取る。そして、楽しそうに歌う朱里を見つめていた。
すると、男の子が来て、私の隣にまた座った。
「中谷さんさ、俺の名前知らないでしょ?」
そう言われ、ギクッとなってしまう。
だって、知らないから。
「うん、ごめん…」
「謝んないでよ、」
私が謝ると、彼はそう言って、笑ってくれた。
「俺の名前、澤田雄介(サワダ ユウスケ)ね、
覚えてくれたらそれでいいよ」
澤田くんは、そう言って、また笑った。
私は、コクっと頷くとすこしだけ微笑んだ。



