「…そうですよね。どうか他の方にも神のご加護がありますように」

 賢い女だ。

 きっと彼女はしっているのだろう。

 神の気まぐれと、その存在の無価値さを。

 他を見捨てるその残酷ささえ。

 「行きましょう。彼の元へ」

 変わらぬ強い瞳、人の心を揺るがすんだ。

 何時の時代にいても。

 「…この運命も、はずれだ…」

 聞こえているはずなのに、優しい彼女は何も言わず檻から抜け出したのだった。