『ではでは、ちょっとしゃべりすぎたな。ごめん。

これからもよろしくお願いします。


明日も聴いてくれると嬉しいです。

では、ばいばーい』


最後は、彼が生きていた頃、お互い手を振って別れるような、そんな軽いものだった。


私はそんな彼の声を名残惜しく思った。

次を聴きたいという衝動に駆られる。


でも、彼はここまでして私との約束を守ってくれたんだ。

私が破るわけにはいかない。


これがあればもう大丈夫。

もう寂しくない。

明日がひどく待ち遠しいけれど。


私の顔は聴く前と打って変わって、ほころんでいた。

さっき感じた頬の筋肉の固さもなくなった。



それにしても……

明日から話す量が少なくなるとしても、ここまでの量を病気が発覚してからの3ヶ月で録音していては間に合わない。


彼は、自分が死ぬことをいつから知っていたのだろうか――